外部専門家の活用ガイドライン(4/5)(国土交通省)

4.外部専門家の業務内容・契約書等
(1)契約・細則等の内容
①契約の規定事項
・ 委託契約を締結することにより、役員の業務を外部専門家に委託することができます。外部専門家である役員の権限・責任や区分所有者との関係についての基本的な内容は、区分所有法や管理規約、細則等で定められますが、これらで定められた内容やその詳細について、書面で契約として締結して明確化しておくことも有効であると考えられます。
・ 外部専門家と締結する契約書において定めておくことが望ましい主な規定事項の例は、以下の表に示すとおりです。実際の契約締結時には、管理組合と外部専門家の候補者との間で、十分に協議を行い、必要な規定を検討することとなると考えられます。
※業務委託契約書の具体例は、資料編
<業務委託契約の主な規定事項>

契約書規定事項 留意点
Ⅰ.契約当事者
(外部専門家の氏名、管理組合側の代表者の氏名)
・「理事長=管理者」を外部専門家とする場合の管理組合と外部専門家の間で締結する契約について、継続(2期目以降の契約締結)の場合は、「管理組合と理事長の利益が相反する事項」(標準管理規約第38 条第6 項)ですので、管理組合側を代表して本契約を締結する者は、監事又は理事長以外の理事である区分所有者の中から選任して記載することが考えられます。
・区分所有法や規約等に従うという原則を定めることも考えられます。
Ⅱ.業務内容
(対象・対象外業務)
・役員の業務内容は管理規約等に規定されているため、「規約に規定される理事長の業務」などといった規定でも足りると考えられます。一方、詳細に規定することも考えられます。
・理事長(管理者)の業務は広範であるものの、特に高度な専門性を要する業務(通常弁護士が行っている法的措置、長期修繕計画の作成そのもの、多額の費用を要する工事の設計そのもの、建替え・敷地売却に向けたシミュレーション作成等)は通常の理事長業務ではないと考えられますので、基本的に通常の理事長業務や報酬の対象外としておき、必要に応じて、別途当該分野の専門家と契約を締結するか、理事長業務とは別の個別の契約を新たに締結することとすることが通常であると考えられます。
・金銭事故の防止等の観点等から、出納業務を対象外として管理業者への委託を義務付けることが望ましく、また、印鑑保管業務を対象外とすることも考えられます。
・平時における外部専門家の対応可能時間・休暇等といった細かな諸条件を定めている実例もあります。
Ⅲ.善管注意義務 ・外部専門家には、委任の規定に従い(区分所有法第28条、民法第644 条)、善管注意義務が発生します。外部専門家は、専門家として相当程度高度な水準の義務を負うと考えられます。
Ⅳ.帳票類等・管理室等の提供等の協力義務 ・外部専門家の業務執行上必要となる帳票類等の書類、管理員室、備品等を管理組合側が無償で提供する義務等について、あらかじめ定めておくことが望ましいと考えられます。
・帳票類等の書類については、業務に必要な範囲でのみ使用すること、保管責任、契約終了後の返還義務等を定めることも考えられます。
Ⅴ.報酬・経費
(金額、支払い方法・期日、追加費用等)
・金額については、年俸、月給制、理事会出席等の出来高等の別を明らかにしておく必要があります。
・月単位の報酬とした場合等において、途中解約等により契約期間に1か月に満たない期間が生じる場合には、日割計算とする旨等もあわせて規定することが考えられます。
・業務に必要な経費や、外部専門家がやむを得ず立て替えた費用の取扱いについて、報酬とは別に、管理組合が負担する旨等を明確に定めておくことが考えられます。
Ⅵ.緊急時の業務 ・災害・事故等の緊急時においては、応急修繕の支出等について通常の意思決定プロセスを経る時間的余裕がないことがあり得ます。外部専門家が責任回避のために緊急対応をしないことのないように、やむを得ず支出した費用の取扱いについて明確に定めておくことが考えられます。
・また、緊急時には、理事長等が様々な判断を迅速に下す必要が生じ、これは外部専門家役員であっても同様ですので、緊急時の連絡体制や参集義務等について定めておくことが考えられます。
Ⅶ.報告・通知義務 ・区分所有者である理事長等にも理事会への定期報告義務がありますが、特に外部専門家役員の場合には、監視・チェック体制の実効性の観点から、業務執行状況や収支の状況について、書面で、定期的かつ詳細に報告する義務を課すことが重要です。
・定期的な報告義務とは別に、外部専門家に対し、マンションの毀損等を知ったときや、外部専門家が欠格要件に該当することとなったとき等は、速やかに管理組合に通知する義務を定めておくことも考えられます。
Ⅷ.守秘義務等 ・業務を通じて知り得た個人情報等の管理組合の情報について、契約終了後も他に漏洩しない旨等を規定することが望ましいと考えられます。
Ⅸ.免責 ・免責事項には、災害等によりやむを得ない場合や、役員としての善管注意義務を果たした等で外部専門家の責めに帰することができない場合の免責について、規定しておくことが考えられます。
・外部専門家が管理組合に損害を与えた場合の補償については、選任の段階で、賠償責任保険への加入状況等を確認しておくことが考えられますが(3.参照)、法人等から個人の専門家を派遣する場合においては、派遣元である法人等が損害を補償する旨の規定を、契約に規定しておくことも考えられます。※詳細は5.(3)参照
Ⅹ.契約途中における契約解除・損害賠償等 <解約の申し入れ時期>
・相手方への契約解除の申入れ時期については、実際の例では、契約期間中の解約でも、契約期間満了時の更新停止でも、いずれも1~3ヶ月前までに行うルールとするものが見られました。
・一方で、契約解除後の管理組合の運営体制を整えるためには半年程度の猶予は必要との考え方もあります。
・また、組合側からの中途解約はいつでも行える(この場合、1カ月分など一定の期間の報酬に相当する額を、外部専門家に支払うこととする例もある。)こととし、外部専門家からの中途解約は、病気等のやむを得ない場合を除いて、原則不可とすべきとの考え方もあります。
<組合側からの解約の手続>
・組合側から外部専門家の解任を求める場合には、組合員・議決権総数の5分の1以上の同意(規約により要件の緩和が可能)に基づき総会を招集し(区分所有法第34 条第3 項、標準管理規約第44 条)又は監事の臨時総会招集権(標準管理規約第41 条)に基づき総会を招集し、普通決議により管理者を解任し、新管理者を選任することが想定されます。
<外部専門家の辞任の手続>
・外部専門家が辞任する場合は、まずは辞任の申入れを他の理事等への書面による通知にて行うこととなると考えられます。なお、契約解除の意思表示(民法544 条)の通知先は、区分所有者全員とせず、理事及び監事(又は特定の理事など)を契約において、あらかじめ指定しておくことが考えられます(区分所有者の代理人の地位)。なお、解任のための総会の招集通知が必要となることもあります。<債務不履行がある場合>
・契約当事者のいずれかに債務の不履行があれば、一定期間の催告の上(又は外部専門家に欠格事由該当があれば)、いつでも解除でき、損害賠償の請求ができるとしている実例もあります。これらの場合の解任は、総会決議ではなく、理事会決議でできることとすることも考えられます。
<補欠>
・契約期間途中において外部専門家である理事長に事故があった場合については、「副理事長がその職務を行う」こととなっています
(標準管理規約第39 条)ので、外部専門家である理事長については、後任が選任されるまで暫定的に区分所有者等である副理事長が業務を行うことが考えられます。
・また、任期満了や辞任により退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う事となっています(標準管理規約第36条第3項)。・ただし、これによらず、あらかじめ補欠に関するルールを管理規約・細則に定めておくことも考えられます(標準管理規約第36条関係コメント④)。例えば、同等の専門性を有する他の専門家をあらかじめ補欠候補として選定し、前任者の残りの任期終了までの期間の業務を後任者が引き継ぐこととする旨を契約に規定しておくことも考えられます。また、団体から専門家を派遣する場合に、正副含め複数の専門家を選任し、正担当に不測の事態が起きた際に副担当が正担当の業務を代わって遂行することとしている例も見られます。
<その他>
・なお、不適切な外部専門家を解任できるよう、解任を可能としておくための措置を講じておくことが必要です。※詳細は5.(1)③
ⅩⅠ.契約期間・更新・終了等 <契約期間>
・契約期間は、管理規約で規定される役員の任期(標準管理規約第36 条)と整合させる必要があります。次期会計年度の通常総会終了までとするほか、外部専門家が役員に就任している間のみ当該契約が有効である旨の不確定期限とすることや、期限を明示すること等が考えられます。
・一定期間にわたり継続的に同じ外部専門家から支援を受けることが望ましいとの観点から、就任期間を2年等と長めに定めておくことも考えられます
<更新>
・ 管理組合の主体性確保の観点から、契約の自動更新は行わず、総会で再任の承認が必要であることとすることが考えられます。
・契約を更新するかどうかについて、満了日の1~3か月前に、双方から相手方に書面で意思表示して協議を開始すること、満了日までに協議が整わない場合の暫定措置等を定める実例がみられます。なお、管理組合側から更新しないこととすることについては、1~3か月前でなくとも可能としておく実例もみられます。・一方、一定期間にわたり継続的に同じ外部専門家から支援を受けることが望ましいとの観点から、契約の自動更新を認めることも考えられます(この場合も、再任の総会決議は必要)。
<契約終了>
・契約を終了する場合(契約解除、契約を更新しない等)には、解任や後任者選任のための総会の招集が必要になります。外部専門家側から辞任する場合は、上述の通り、他の理事及び監事に通知することとすることが考えられます。
・契約終了時の円滑な業務引継のため、努力義務等として、後任者の選定の支援や、後任者への円滑な業務引継義務、管理組合から提供を受けた書類の返却義務等について定めておくことが望ましいと考えられます。
ⅩⅡ.誠実義務・利益相反関係 ・管理組合から委託されている業務に関し、管理組合の承諾していない紹介料等の収受の禁止や、利益相反取引の制限、これに違反した時は契約解除とすること、管理組合に損害を与えたことが明らかな場合は損害賠償の責任を負うこと等や、違約金について定めておくことも効果的であると考えられます。※詳細は5.(1)④参照
ⅩⅢ.契約外事項等 ・法令や消費税率等の改正に伴う契約変更について、規定しておくことも考えられます。
・契約外事項や疑義があった場合に誠意を持って協議すること等について、定めておくことが望ましいと考えられます。

②外部専門家の業務内容について
・ 役員の業務内容については、管理者の業務が区分所有法(第26 条)に規定されているほか、標準管理規約においては、基本的事項は管理規約で定められているものの、理事長の業務は「規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議」によること(第38 条)、理事の業務は「理事会の定めるところに従う」こと(第40 条)となっています。外部専門家が就任する場合の業務内容(権限配分、責任等)も、通常の区分所有者である役員と同様、この管理規約・細則等に基づくことになりますので、特に、通常の管理者の業務のうち一定のものを対象外とする場合には、必要に応じ、管理規約又は細則において詳細かつ明確に定めておくことが望ましいと考えられます。(※2.(2)②1)も参照)