外部専門家の活用ガイドライン(1/5)(国土交通省)

1.ガイドラインの目的
(1)ガイドライン制定の目的
①ガイドライン制定の背景
・ 平成28 年3 月、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号。以下「マンション管理適正化法」という。)第3条に基づく「マンションの管理の適正化に関する指針」(平成13年告示第1288号)が改正され、「一 マンションの管理の適正化の基本的方向」の4において、外部専門家が管理組合の管理者等に就任する場合には、「マンションの区分所有者等が当該管理者等又は役員の選任や業務の監視等を適正に行うとともに、監視・監督の強化のための措置等を講じることにより適正な業務運営を担保することが重要である。」とされました。
・ また同時に、「マンション標準管理規約及び同コメント」(以下単に「標準管理規約」という。)が改正され、組合員ではない外部専門家が、管理組合の役員や管理者に就任できることとする場合の規定例等の整備がされました(標準管理規約第35 条、全般関係コメント、別添1他)。

・ 上記改正に当たってのパブリック・コメントでは、「外部専門家による誠実義務違反や利益相反を防ぐための方策、資格・財産的基礎を担保するための要件、事故があった場合の措置等について、より具体的な例示や、ガイドライン等を示すべき」等のご意見が寄せられたことから、「今後、より具体的な例を示すこと等について、検討する」との国土交通省の考え方が示されました。
・ 本ガイドラインは、以上を踏まえ、外部専門家である役員の適正な業務運営を担保するための措置の具体例を示すものです

②外部専門家を役員等として活用する必要性

・ 上記のように、外部専門家を管理組合の役員等として活用可能とするための改正が行われることとなった理由は、「近年、マンションの高経年化の進行等による管理の困難化やマンションの高層化・大規模化等による管理の高度化・複雑化が進んでおり、これらの課題への対応の一つとして、外部の専門家の活用が考えられる。以前から、管理組合がマンション管理士等の専門家に対し、相談、助言、指導その他の援助を求めることについては規定してきたが、さらに進んで、外部の専門家が直接管理組合の運営に携わることも想定する必要がある。」とされています。
また、「このような外部の専門家には、管理の執行を担うという点から、特に、管理規約、管理の委託、修繕、建替え等に関する広範な知識が必要」ともされています。(標準管理規約全般関係コメント③より)

(2)ガイドラインの対象
①外部専門家の位置付け
本ガイドラインは、マンションの管理組合の組合員(区分所有者)以外の外部専門家を、管理組合の「理事長」や「管理者」として活用する場合(標準管理規約第35条)の、実務的な留意点や想定される運用例をまとめたものです。
したがって、外部専門家を顧問、アドバイザー、コンサルタントといった第三者的立場での助言者等として活用する場合(標準管理規約第34条)や、管理事務を管理業者に委託する場合標準管理規約第33条)については、本ガイドラインでは対象としておりません。

②ガイドラインを活用いただく方
主として、管理組合の担い手不足の課題に直面し、又は懸念している、既存マンションにおいて活用を検討するに当たっての管理組合の方の実務上の参考としていただくとともに、外部専門家、マンション管理業者等の方にも参考としていただくことを想定しています。

③ニーズが想定されるマンションのタイプ
・ 本ガイドラインでは、主として、住宅政策上の重要な課題となる管理不全マンションになることも懸念される既存のマンションを念頭に置き構成しています。例えば、月例の理事会出席が主な業務となる一般理事の担い手は存在するが日常的に区分所有者や管理会社等との連絡調整等の業務がある理事長の担い手確保に苦慮、修繕積立金の値上げ・滞納回収が必要といった課題を抱えるようなマンションです。
・ 以上のように、本ガイドラインは、投資型マンションや新築分譲マンション等を念頭に作成されているものではないという点に、十分ご留意いただく必要があります。今後、本ガイドラインの活用状況や実態把握に努め、必要性があれば追加等を検討していきます。
一方、管理費が全く徴収されていない等の状態に陥っているマンションの管理適正化を、本ガイドラインのみで行うことは困難です。
・ 本ガイドラインの主な対象である、管理不全マンションになることも懸念される既存マンションにおいて理事長に就任する外部専門家は、次のような業務を担うことが想定されます。
<理事長としての具体的な業務内容の例>

・総会・理事会の議長(代理出席不可)、組合員からの相談対応、管理業者への指示
・規約違反者等への警告等、規約改正・訴訟追行の場合の弁護士への相談・出廷
・長期修繕計画見直し、修繕積立金の引上げ等に向けた提案・管理業者等との調整
・大規模修繕工事に係る設計会社等との調整・災害等緊急時の保存行為の決定 等

④管理組合の管理方式のパターンとの関係
・ 管理組合の管理方式には、いくつかのパターンが想定され、パターン毎に外部専門家の位置付けや役割に相違が生じてきます(具体的には、標準管理規約全般関係コメント③及び別添1で示されている3パターン(下記表)参照)。
・ 本ガイドラインでは、原則として標準管理規約で示している規定があることを前提として記述していますので、特段言及がない場合は、下記(1)理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型のパターン(理事会が設置され、かつ、外部専門家が理事会の理事又は監事に就任)を前提として例を示しています。
・ さらに、個人である外部専門家が、理事長に就任するケースを念頭に置いて例を示しています。その趣旨は、マンションの高齢化等に伴って、日常的に連絡調整等の業務が発生する理事長のなり手に困るようになったが、月例の理事会に出席する一般理事・監事のなり手は引き続きある等のマンションを典型的な例として取り上げるとともに、役員の中で最も権限が大きく課題も多いと考えられる理事長を例にガイドラインを示すことで、一般理事など他の役職の役員に就任する場合についても共通する考え方を示すこととしたものです。
したがって、外部専門家が理事長以外の役員に就任することを妨げる趣旨ではありませんので、個別のマンションの事情に応じて一般理事等に就任させることとするケースについても、共通する考え方は参考にしていただけます。(後述するように、本ガイドラインは、管理業者が自ら管理者に就任する場合の手法についてお示ししているものではありません。)

・ その上で、他のパターンに特有の点について、特に解説が必要であると考えられる場合に追加的に解説を付している箇所もあります。なお、標準管理規約本文で想定されていないパターンについては、今後、本ガイドラインの活用状況や実態把握に努め、必要性があれば追加等を検討していきます。

<標準管理規約「別添1」で示された外部専門家活用の主要3パターン>

(1)理事・監事外部専門家型
又は理事長外部専門家型
※本ガイドラインで主に想定する方式
(2)外部管理者理事会監督型 (3)外部管理者総会監督型
・理事会有り ・理事会有り ・理事会無し(総会のみ)
・管理者=理事長 ・管理者≠理事長 ・理事長がいない ・管理者≠理事長 ・理事長がいない
・外部専門家は「役員」(理事(理事長=管理者を含む)又は監事)に就任 ・外部専門家は役員ではない
・外部専門家は「管理者」に就任
・外部専門家は役員ではない
・外部専門家は「管理者」に就任

・ なお、「役員」(理事又は監事)は、自然人(法人・団体から派遣される個人含む)の4みが想定されます((1)のパターン。標準管理規約第35 条関係コメント④参照)が、他方、役員ではない「管理者」の場合は、法人そのものが就任することも想定されます((2)(3)のパターン)。

⑤マンション管理業者との関係
・ 多くの管理組合では、その業務の一部をマンション管理業者に委託しています(マンション管理適正化法第2条第六号、第七号等)ので、本ガイドラインにおいても、特段言及がない場合には、管理組合とマンション管理業者の間に「マンション標準管理委託契約書及び同コメント」(以下単に「標準管理委託契約書」という。)と同様の契約が締結されていることを前提とします。
なお、本ガイドラインが対象としている外部専門家が理事長(管理者)として意思決定を伴う業務を担うことと、その補助をする等のために標準管理委託契約書に規定されている業務をマンション管理業者が行うことは、異なります。したがって、理事長に就任した外部専門家が清掃や建物点検を行うことは想定していません。
また、本ガイドラインでは念頭に置いていませんが、管理事務を管理業者に委託していない場合(自主管理)において、これらの事務を外部専門家である役員に委託することも考えられますが、マンション管理業者以外の者に基幹事務(マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条第六号、第七号等)を一括して委託することは法律で禁止されていますので、注意が必要です。
・ 投資型マンション等においては、分譲当初よりマンション管理業者が自ら管理者に就任しているケースが見られます。本ガイドラインは、このような投資型マンションや管理業者が自ら管理者に就任する場合の手法についてお示ししているものではありません。なお、区分所有者の利益追求と管理業者としての企業収益の追求とは、立場や目的が異なると考えられることから、利益相反の観点から十分に配慮が必要です。