外部専門家の活用ガイドライン(2/5)(国土交通省)

2.外部専門家選任の進め方について
(1)外部専門家の活用のニーズの見極め
①外部専門家の活用のニーズの見極め
・ 外部専門家の役員としての導入検討に当たっては、理事会で議論を開始することが多いと考えられます。なお、役員の選任要件の緩和、人数、業務内容、理事会の開催回数の検討、顧問契約による外部専門家の支援活用など、役員の負担軽減・担い手確保のための取組を、実施・検討することも考えられます。
・ 外部専門家を役員として活用することによるメリットとデメリットについても、あらかじめ検討しておくことが考えられます。加えて、外部専門家には、区分所有者である役員よりも高度な善管注意義務が課されると考えられますが、外部専門家が役員に加わった場合においても、他の区分所有者である役員の善管注意義務が軽減されるとは限らず、外部専門家である役員の業務執行状況の監視が必要であるなど、外部専門家に完全に任せきりにすべきではありません。

<メリット>
専門的見地による管理組合運営の適正化、意思決定の迅速化、専門家が有するネットワークによる情報収集力向上、課題把握の適確化、管理組合の負担軽減等<デメリット>
外部専門家への報酬の支払いに伴う管理組合の支出増大等

・ このようなニーズの見極め段階においても、外部専門家の支援を受けることも考えられます。管理組合に対する支援事業を実施する自治体やマンション管理士の団体、地域のマンション管理組合の団体、専門家の派遣を行うNPO 等へ相談したり、専門家の派遣を受けたりすることも一案です。まずは顧問等として専門家の支援を受けることも考えられます。自治体の主催する無料相談等で知り合ったマンション管理士に、個別課題について相談していく中で、信頼関係が形成され、役員としての活用に至る例があります。

(2)外部専門家役員の導入までの進め方・手続き
①外部専門家役員の導入までのプロセスの全体像
・ ニーズを見極めた結果、外部専門家を役員として導入する必要があると判断された後、外部専門家を役員として実際に導入するまでのプロセスは、概ね次の通りです。
・ 大きな流れとしては、現体制の理事等が主体となり、区分所有者への説明会等で情報共有・意向把握を重ねながら検討し、総会での導入推進決議も経て、候補者の選定や必要な細則・契約・予算の案を検討し、最終的な総会決議において正式に決定することが考えられます。
規約で役員の要件が「組合員のうちから」となっている場合は、事前に、外部専門家も選任可能とするための規約改正や細則制定等を行います。なお、外部専門家の選任
決議と同時に行うことも考えられます。
・ 実例においても、アドバイザー・顧問等となっている外部専門家の支援を得て、下記のような手続を行っているケースが見られます。

<外部専門家役員の導入までのプロセスの例>

②意思決定に必要な手続
1)外部専門家の選任方法に係る細則等
・ 建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下「区分所有法」という。)上、管理者は、規約に別段の定めがない限り総会で選任され(第25条第1項)、本人が承諾すれば管理者に就任できます(第28条、民法第643 条)。標準管理規約上は、総会で理事及び監事を選任し(標準管理規約第35 条第2項)、理事会において理事の中から理事長・副理事長・会計担当理事等の役職を割り当てていくこととなっています(標準管理規約第35 条第3 項)。

他方、外部専門家の選任方法については、細則に委任されています(標準管理規約第35 条第4 項)ので、あらかじめ細則等において、特別の手続(役職も含めて総会で決議する等。下記参照)を定めておくことが望ましいと考えられます。さらに、外部専門家の資格要件や欠格要件に関する事項のうち、基本的内容についても、定めておくことが考えられます。その他、細則において、外部専門家が役員に加わることに伴う理事会運営等の特別ルールがあれば、定めておくことが考えられます(監視体制、業務内容、理事会の議決権の有無等)。
なお、実際の例では、総会での導入決議(後述)と同時に、必要な規約・細則についての決議もされるケースが多いようです。
<標準管理規約における外部専門家の役員就任に係る規定>

(役員)
第35条
※外部専門家を役員として選任できることとする場合
2 理事及び監事は、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。
【コメント】
第35条関係
① 管理組合は、建物、敷地等の管理を行うために区分所有者全員で構成される団体であることを踏まえ、役員の資格要件を、当該マンションへの居住の有無に関わりなく区分所有者であるという点に着目して、「組合員」としているが、全般関係③で示したとおり、必要に応じて、マンション管理に係る専門知識を有する外部の専門家の選任も可能とするように当該要件を外すことも考えられる。
この場合においては、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」の第4項のように、選任方法について細則で定める旨の規定を置くことが考えられる。(略)
⑤ 第4項の選任方法に関する細則の内容としては、選任の対象となる外部の専門家の要件や選任の具体的な手続等を想定している。なお、⑥及び第36条の2関係②について併せて参照のこと。

<外部専門家の選任手続等に関して細則で定めておくべき事項の例>

第○条 ○○マンション管理規約(以下「規約」という。)第35 条第4 項及び第70 条の規定に基づき、この細則を制定する。
(補足:便宜上、規約の条番号は標準管理規約に準拠した。以下同じ。)
第○条 規約第35 条第3 項に基づく役員の選任において、組合員以外のマンションの管理に関する専門的知識を有する役員(以下「外部専門家役員」という。)を選任する場合については、同項の規定にかかわらず、総会の決議において、理事長、副理事長、会計担当理事、その他理事又は監事のいずれであるかをも決定するものとする。
(補足:本規定は、規約第35 条第4 項に基づき、役員の役職は理事会で決定することとしている規約第35 条第3 項の規定の特例として、外部専門家に限り、理事長といった役職までも総会で定めることとするものである。次の規定も同様。)第○条 外部専門家役員を選任しようとするときは、理事会において外部専門家役員の選任に関する議案を作成し、総会に提出し、その承認を得られなければならない。
第○条 外部専門家役員は、理事会における議決権を有しない。
(補足:本規定は、規約第70 条に基づき、理事会決議は理事の過半数で行うこととしている第53 条第1 項の特例として、外部専門家である理事には議決権を付さないこととするものである。5.(1)②1)参照)
第○条 本細則に定めるもののほか、外部専門家役員の選任及び解任に係る細目は、外部専門家と管理組合との間で締結される契約に定めるところによる。
第○条 外部専門家役員は、○○○円以上の経費の支出が必要となる場合には、あらかじめ、理事会の承認を得てその支出を行うことができる。 等

2)新たな管理方式の導入に向けた検討開始
・ 導入に向けた必要な手続や検討は、基本的に理事会が中心となって行うこととなりますが、この段階で、候補者である外部専門家等からアドバイザー・顧問等としての支援を受けることも考えられます(なお、顧問やコンサルとしての契約締結にも総会決議は必要です。)。
また、管理組合や区分所有者に重大な影響を及ぼす事項ですので、理事会として具体的な検討に着手する旨を、区分所有者に周知・広報しておくことが望ましいと考えられます。

3)候補者の選定
・ 並行して、外部専門家の候補者の選定を進めることとなります。候補者の選定のプロセス等は、3.で解説します。
・ なお、信頼できる外部専門家の見極めと手続支援のために、役員として選任する前に、アドバイザー・顧問等の形で支援を受けてから、役員として選任することが一般的です(なお、顧問やコンサルとしての契約締結にも総会決議は必要です。)。
4)区分所有者に対する説明会等
・ 区分所有者への説明会や、区分所有者全員へのアンケートの実施によって、具体的な検討に着手する旨を区分所有者に周知するとともに、あわせて、意向把握を行うことも考えられます(特に、当該マンションに居住していない区分所有者には情報が届きづらいので、情報共有や意向把握に当たっては留意が必要です。)。
この際、「区分所有者のみによる管理の継続ができない理由」、「役員として活用することと、顧問や管理業者を活用することの相違点」、「メリット・デメリット」など、導入が必要と判断されるに至った議論の過程について、文書等も用いながら、区分所有者に丁寧に説明することが望ましいと考えられます。

5)総会における導入推進決議
・ 外部専門家の役員選任を決定する正式な総会決議の前に、総会において導入推進決議を経ておくことが望ましいと考えられます。
法的に必ず必要な決議ではありませんが、外部専門家役員の導入に向けて具体的な手続を進めていく旨を決議しておくことで、役員の候補者である外部専門家と理事会との間で契約書等の詳細な検討・調整を着実に推進することができ、必要な検討費用の支出も行うことができます。
・ 導入推進決議では、外部専門家役員の導入に向けて具体的な手続を進めていく旨、候補者(あくまで候補者として承認を得る)、新たな管理方式や外部専門家の業務内容等の大きな方向性、スケジュール等を明示して、決議を得ることが考えられます。
また、規約で役員の要件が「組合員のうちから」となっている場合には、この総会で、外部専門家も選任可能とするための規約改正や細則制定等を行っておくか、次の6)の外部専門家の選任決議と同時に行うことも考えられます。
・ 導入推進決議の後、当該候補者を役員として選任する方向で、候補者と理事会との間で、契約書、報酬等の詳細な調整を進め、6)の総会の議決事項を検討します。
6)総会における導入決議
・ 外部専門家役員を正式に導入するには、役員の選任、細則、契約書、報酬等に係る予算などについて、総会決議を経る必要があります。さらに、規約において役員の要件が「組合員のうちから」となっている場合や、理事長でない組合員が総会招集を行う場合の要件を「組合員の10 分の1以上の同意」等に緩和することとする場合には、管理規約改正の決議(区分所有者及び議決権の4 分の3 以上の特別多数決議)も必要です。
・ 正式な総会決議の前に、区分所有者向けに説明会を開催し、議案、スケジュール、諸条件等について説明・質疑を行う場を設けることも考えられます。
・ 議決事項としては、外部専門家である候補者を役員(役職も明示)に選任する旨、管理規約(必要に応じ)、細則の制定・改正案、外部専門家と締結する契約書案、外部専門家の報酬に関する予算案が考えられます。管理規約の改正以外の事項は、普通決議で可能です。